苔を育てるのに必要になる土。
しかし厳密に言えば、必ずしも「土」が必要になるわけではありません。
苔の中にはコンクリートや砂、樹皮でも育つものもいるもすね。
とはいえ、苔が元気に成長するためにきちんと苔に適した土を選ぶことは大切です。
ここでは苔を育てる上でおすすめの土をタイプ別にご紹介します。
【基本】苔の特徴を知ろう
苔を育てる土台となる「土」。
それを選ぶ前にまずは苔の特徴を知りましょう。
特徴1.苔に根はない
一般的な植物にとって、土は必須。
栄養たっぷりの柔らかな土に根を伸ばし、土の中の栄養分を維管束を使って吸い上げて・・・
ですが、苔はこの「維管束」を持ちません。
土からは何一つ吸い上げないのです。
上記画像にある茶色い根のようなもの。
これは「仮根」と呼ばれ、地面や壁に張り付くために使われています。
特徴2.苔は体全体で必要な栄養を吸い取る
苔は空気中の水分と二酸化炭素、栄養を体全体で吸収し、光合成によってエネルギーを生み出しています。
ただし、根を持たない苔は光合成で必要となる「窒素、リン酸、カリウム」もまた空気中から吸収していると考えられています。
雨や土壌由来の湿気には微量だけど無機塩類が含まれるもす。
特徴3.苔は胞子や無性芽で増える
苔の増え方は受精によって胞子をつくることで増える方法と一部の苔では無性芽を撒いてクローンのように増える方法があります。
※他に植物体の断片から再生する方法もあります。
土はこのような胞子体や無性芽が成長するためのベッドのような役割も担います。
特徴4.湿気は好きだけど蒸れは苦手
苔は体全体から水分を吸収するため、湿気のある場所を好むものが多いです。
しかし、風邪通しが悪く熱気がこもる「蒸れ」は苦手。
蒸れは苔を弱らせ、弱った苔はカビにやられることも。
そのため、苔の土台となる用土は「排水性のよいもの」を選ぶ必要があります。
特徴5.苔は弱酸性を好む
苔は弱酸性の用土で成長がスムーズになると言われています。
雨に当たる屋外の土は基本的に弱酸性です。
逆に苔を枯らす方法としてアルカリ成分である石灰や酢、重曹を撒くという方法もあるもす。。。(lll′-`lll)
畑の土としてお手入れされていない日本の土壌は基本、弱酸性だと言えます。
しかし、腐葉土の多い土や栄養成分が多い土を使うと、カビや藻の原因になることも。
特に室内で苔を育てる場合には清潔な土を用意することをおすすめします。
【おさらい】
- 苔に根はない
- 苔は体全体で必要な栄養を吸い取る
- 苔は胞子や無性芽で増える
- 湿気は好きだけど蒸れは苦手
- 苔は弱酸性を好む
苔の基本の用土
以上の苔の特徴から、苔の用土におすすめなのは
- 排水性(水はけ)がよい
- 適度が保水性もある
- 目が細かい(胞子や無性芽をキャッチ)
- 防カビ効果がある
- 栄養分が少ない
- 弱酸性
- 清潔
といった特徴の用土を選べばOK!
それでは具体的にどんな用土にすべきかをまとめます。
苔の土、基本のブレンド方法
苔テラリウムの土の配合
【密閉タイプの場合】
- 赤玉土:7
- 川砂:2
- 燻炭:1
【オープンタイプの場合】
- 赤玉土:6
- 川砂:1
- 燻炭:1
- ピートモス:1
+ - 小粒の石
- 乾燥ミズゴケ
※上記はアメリカのテラリウムメーカー「Twig Terraiums」の土作りにアレンジを加えた方法です。
上記の土は室内で苔を楽しむ場合に適しています。
苔庭の場合にはもう少し保水性を高めた配合がおすすめです。
記事後半にまとめますね。
密閉容器の場合
密閉タイプは完全にフタをしてしまうテラリウムボトルのこと。
全ての土を乾燥状態でブレンドするだけです。
あとは適量を小分けし、適度に霧吹きで湿らせたらテラリウム容器に入れていきます。
苔を植え付けたら完成です!
オープンタイプの場合
フタをしないタイプの場合には、水分がどんどん蒸発してしまうため、密閉タイプよりも保水性のある土づくりが必要になります。
瓶の一番底に、小粒の石を入れて、その上にミズゴケ(園芸用品)を薄く敷きます。
ミズゴケは一度水で濡らし、よく絞ってから入れてください。
そしてその上に上記ブレンド(オープンタイプの方)の土を軽く湿らせて入れていきます。
ピートモスは保水性を高めてくれるよ。またミズゴケは保水効果の他、不純物を取り除くろ過装置としての働きもあるもす。
苔テラリウム専用の培養土を用意する方法も
苔テラリウムが人気となった今、たくさんの苔専用用土が販売されています。
粒状の培養土を購入して使うのが一番簡単ですし、手も汚れません。
mosscoは土ブレンドが面倒な時には翔美苑の苔培養土を使っています。
その他、樹皮培養土も苔には向いています。
あと…アクアリウム用のソイルが良いという話も時々見ます…。
でも、アクアリウム用のソイルは「苔の発生を抑える」と書いてるものが多く…使ったことがないので自己責任でお願いします…💦
苔庭用の土づくり
庭に苔を広げていく「苔庭」を作るためには先ほどの用土では、保水力が足りません。
庭は春夏秋冬があり、常に外気に晒される環境であり、乾燥の影響を受けやすくなります。
なので土は、保水性のあるものにすることで苔を乾燥から守ってくれます。
【苔庭の土作り】
- 赤玉土:3
- 川砂:2
- ピートモス:2
- 元々の庭土か黒土:2
- 軽石またはバーミキュライト:1
岩に活着させるには
苔の育つ環境は様々。必ずしも土の上ばかりではありません。
特に自然の苔が岩にくっついている景観をそのままテラリウムに置き換えたいという方は多いですよね。
岩や石に苔をくっつけるには、以下のような3つの方法があります。
溶岩石や火山石のくぼみを使う
溶岩石は多孔質で苔の仮根が活着しやすく、また、水はけも良いため苔を活着させるのに向いています。
溶岩石の場合は、凸凹と穴が開いているので、そこにケト土など粘りのある土を入れて上に苔を乗せます。
そのままで活着を待つか、出てきてしまいそうな場合は園芸用の不織布を被せて活着を待ちましょう。
うまくいけば1~2ヶ月で活着します。
失敗すると苔全体が茶色に変色してくるので、その場合には一度取り除いて新たにチャレンジすることをおすすめします。
苔を糸で巻き付ける
岩の表面に苔のマットを置き、テグスのような細い糸で巻き付けます。
この時、あまり強く、細かく巻き付けず、ずり落ちない程度に軽く巻き付けます。
あとは活着するのを待つばかりです。
元あった場所から剥がされた苔は仮根がダメージを受けていたり、乾燥に弱くなっていたりします。
毎日しっかりと水分を与えましょう。
石は多孔質なものや、表面が凸凹しているものがいいよ。
園芸用接着剤を使う
水草の定着用など、園芸用の接着剤を岩表面に点上につけ、その上に苔を張り付けていきます。
表面がつるつるした岩などに向いたやり方ですが、空中湿度を維持できる環境でない場合、苔の活着が進まなかったり、茶色く変色してしまうことも多いです。
園芸用の接着剤はそんなに強度がないので、苔を丁寧にばらして少量ずつつけるのがコツだよ。
初心者さんにおすすめ!失敗しにくい苔はどれ?
苔は繁殖力が強く、土がなくてもたくましく生きる植物なのは間違いないです。
だけど、その反面環境の変化に適応できず、じわじわ茶色く変色してしまうこともあります。
そんな苔の中にも、多少乾燥しようが、放置されようが、元気いっぱいに育ってくれる苔があるんです。
それが
ホソバオキナゴケ
です。
杉の木の根元などにマット状に広がっているのを見ることも多い「ホソバオキナゴケ」。
苔テラリウムではよく芝生に例えられます。
このホソバオキナゴケは本当に丈夫です。
今まで様々な環境で様々な苔を育ててみましたが、ホソバオキナゴケは比較的どのような環境でも定着して育ってくれました。
「どの苔を選ぼうか…」とお悩みの方はホソバオキナゴケをおすすめします。
お店では「山苔」として販売されていることも多いもすよ。
苔の用土選びによくある質問
Q1.苔は土がなくても育ちますか?
A.はい、育ちます。しかし土の代わりとなってくれる土台が必要になります。
これは何でもいいわけではありません。保水性と水はけがよいものに限ります。
具体的には多孔質の岩、樹皮、ザラザラとした質感の石などです。
全く保水性がなかったり、つるつるとした素材(例えばプラスチックなど)を土台にするのは難しいです。
ただし、しっかりと水分管理ができれば新聞紙の上でも育てることができます。
ただ、苔にとってよい環境とは言えませんね。
Q2.100均の土も苔の用土として使えますか?
A.可能です。ハイドロボールや赤玉土、鹿沼土、または「多肉植物の土」がおすすめです。
ハイドロボールは大きめなものでも時間をかければ苔は活着しますが、小粒のものの方が安定します。
こちらはダイソーさんのハイドロボールです。こちらはちょっと大粒。
もう少し小粒の方が扱いやすいです。
Q3.苔に肥料は必要ですか?
A.基本的には不要ですが、窒素・リン酸・カリウムと言った植物が育つ上での無機塩類をごく少量液肥で与えることで成長が良くなるという説もあります。
ただし、液肥の与え方は大変むずかしく、与えたことで苔が枯れることもあるようです。
私自身、霧吹きに1~2滴の液肥を入れて与えたところ、特に問題なく成長、緑が鮮やかになった経験もありますが、同時に茶色く変色したものもあります。
苔の種類・状態によるので積極的にはおすすめしません。
Q4.苔テラリウムに入れる土は何がいいですか?
A.上述したように、密閉するものとそうじゃないものによって分けることをおすすめします。
詳しくは「苔の基本の用土」を参照ください。
Q5.苔に黒土がよいと聞いたのですが…
A.黒土は排水性・保水性の両方を兼ね備えていますが、単体での使用の場合、苔にとってはやや排水性が悪くカビの原因になることもあります。
特に密閉容器で苔テラリウムにする場合にはおすすめできません。
苔庭を作る際に赤玉に混ぜ込む土にする程度でよいかと思います。
まとめ
地球が誕生したのは今から46億年前。そして最初に命が生まれたのは38億年前の海。
初めて陸上での生命活動が始まったのは今から約4億8千年前に緑藻類、次いで進化したのが苔だそうです。
苔は誕生からほとんどその姿を変えることなく現在まで繁栄を極めています。
北極や南極、赤道直下の国にも苔はあるもす。
苔はどんな環境でも生き延びることができるタフな能力を持っています。
例え枯れたように見えても多くの場合、水を与え、適切な湿度環境・苔の好む環境に戻すと復活します。
だから、気負わず苔を楽しんでみましょう。
小さくて花も咲かせない苔ですが、実は四季を通して様々な姿を見せてくれます。
苔を手元で育てることはその魅力に気づくことができるチャンスです。
ぜひ一緒に苔のある生活を楽しみましょう!
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